2017/09/09

自ら行う地域医療マーケティング

「凄い! まるで経営コンサルタントみたいですね」

 コンビニであれクリニックであれ、新たに出店(開業)する場合は、予定あるいは検討している地域の基本情報を分析します。とりわけ、その地域の「人口」です。人口の多いところに出店(開業)すれば、たくさんの来客(患者)が見込めるはずです。大手コンビニチェーンなどには「(出店調査のための)地域マーケット分析」を専門に行う部署があって、エリア内の人口や気候など基本データのほか、学校やホテルなど人が集まる施設の立地、スーパーや酒屋など競合店の立地、駅の乗降者数や道路の交通量、地域イベントの年間スケジュールなどを綿密に分析して、出店先を決めています。

 こうした「出店マーケティング」は今でこそ当たり前ですが、由緒ある病院が開業した数十年前は、こんな分析調査はありませんでした。もちろん、その関係の専門部署などもっていません(医療事務だけで精一杯なのに、ましてやマーケティング部なんて‥)。しかしながら、数十年も経てば、周囲の環境も大きく変わってきます。例えば、新しい駅ができた、大規模商業開発があった、大きなマンションができた、あるいは逆に商業施設が撤退したなどなど、地域の環境は変化しています。こうした時、多くの病院は、外部のコンサルタントに頼ってしまいます。クリニックの新規出店の際も同様でしょう。「医療が専門なのだから、マーケティングなど専門外の仕事は外部に任せたほうが良い」。ある意味、それも真理です。

 とはいえ私は、病院の皆さんが「自ら、地域マーケティング分析」を行うよう勧め、積極的に指導しています。理由は、「自分らの働く地域のことは自分らが一番知っている」(経営コンサルタントはみな優秀ですが、その地域に住んで働いているケースは極まれです)こと、そして「情報化が発達して、昔に比べ分析が簡単になった」(インターネットにつながったパソコンがあればOK)からです。

 さて、私が住んでいる東京都世田谷区で、それをやってみました。Google検索で「世田谷区_人口_町丁別」と検索すると、「世田谷区の町丁別人口」という世田谷区役所のホームページがヒットします。そこをクリックして区の統計情報のページに入り、そのなかで「年齢別人口」→「平成29年(2017年)」→「北沢地域(町丁別)」と進んでいくと、「○○何丁目」ごとの年齢別人口が全て入ったエクセルファイルが出てきます(こちらです)。そのファイルには、「自分の住む地域(丁目別)で、ことし何人の子どもが生まれたか(ゼロ歳の数)、75歳以上の高齢者が何人いるか」などが全て出ています。役所のデータですから、もちろん無料です。毎年度、データが蓄積されています。それらを分析することで、病院周辺の人口動態が克明に分析できるのです。エクセルをちょっと使ったことがあれば、誰でもできることです。ただし、東京などの大都市や地方の中核都市はこの情報公開レベルにありますが、過疎地域の自治体だとここまで出ていないかもしれません(公開はPDFファイルのみ、など)。でも、そうした自治体では「人の付き合い」が逆に密なので、ぜひ役場の人に電話して直接問い合わせてみて下さい。

 さらに「おススメ」したい方法があります。それは、こうしたマーケティングを事務職員ではなく、OTと高齢患者さん達の作業療法としてやってみてもらうこと。部屋に地域の白地図(役所で売っています)を大きく広げ、みんなで「塗り絵」作業をしてみて下さい。「その一角は高齢人口が多いから赤に塗ってね!」(OT)、「あぁ、ここは特養があるから多いんだね」(パートさん)、「あのね、この土地は昔、沼地でね、私ね、小さい頃ここで遊んでね‥」(患者さん)などなど、ワイワイがやがややりながら、その土地の歴史と今を知る。これこそ究極の「エリアマーケティング」だと思います。

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