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2017/10/13

病院経営のカタカナ戦略

「ホント経営学ってカタカナ多いですよね。医学もそうですけど‥」

 「こちらにもありますけど、カタカナばかり‥。何となくイメージはありますが、実際に何をどうするのかとか全く解りません」。と言われているのは、経営戦略論で頻出するキーワードです。イノベーション(技術革新、新機軸創造)、マーケティング(顧客開拓、市場適応)、リストラクチャリング(事業再構築、合理化)、アウトソーシング(外部委託、業務請負)など。確かにカタカナばかりですね。先のエントリのマトリクスでは、「問題児」でイノベーション、「看板」でマーケティング、「金のなる木」でリストラクチャリング、「招かれざる客」でアウトソーシングと整理していますが、医療従事者の皆さんには流石に解りにくいだろうと思います。ここでは、カタカナそれぞれの意味と用法について、マトリクスのコードネームごとになるべく解りやすく説明していきましょう。

 「問題児」ゾーンには、その病院の「件数増・低収益」患者が集まっています(マトリクスの4ゾーン別に仕分けた結果はこちら:以下同じ)。これらの患者対応には抜本的なイノベーションが必要です。患者が押し寄せているのに点数が確保できないのですから、頑張れば頑張るほど足下が沈んでいくパラドックスに陥ってしまうのです。マトリクスにある通り高齢者の急増を背景に、認知症患者も肺炎患者も日々増えるばかり。これらに立ち向かうイノベーションには、例えば「ユマニチュードによる認知症ケア」や「肺炎クリティカルパス+退院支援パスの整備」などがあります。認知症患者の増加で対応する医療従事者が消耗しないように新たな技術を貪欲に取り入れ、また、肺炎患者の退院支援に戸惑いズルズルと在院日数を伸ばしてしまわないような新たな仕組み(機軸)を的確に整備して行く。「新たな技術」や「新たな仕組み」こそ、こうした分野に必要なイノベーションなのです。

 「看板」ゾーンには、その病院の「件数増・高収益」患者が集まっているのですから、ここで必要なのは「とにかく掻き集める」活動です。増やして、増やして増やしまくることが、そのまま収益増につながるのです。しかも、社会に患者は増加中。文字通りの新規開拓、顧客創造、販売促進、イメージ通りのマーケティングです。例えば、整形外科を擁する回復期病院なら、大腿骨頸部骨折や脳梗塞の患者を集めるためにMSWを多数マーケティング部門に再配置し、DPCデータで近隣の骨折や脳血管のオペ実績のある急性期病院をリストアップして、件数が多く距離が近い病院から順に「顔の見える」営業を仕掛けていきます。こうした活動を、ターゲットマーケティングと言います。私の経験では企業よりも病院のほうが、こうしたマーケティングに向いているようです。企業の営業だと競合相手も多く価格設定の自由度があるので競争に打ち勝つのは非常にシビアな世界ですが、地域医療圏内の病院立地が一定程度管理され診療報酬制度で価格が統一されている医療の世界では、過当競争が限られているからではないかと見ています。

 「金のなる木」ゾーンには、その病院の「高収益・件数減」患者が集まっています。意外に思われるかもしれませんが、これらの患者対応には継続的なリストラクチャリングが不可欠です。ピロリ菌感染率の低下に伴って胃がん患者が減少するように、将来的にはどんどん市場が小さくなる分野が存在します。とはいえ点数は高いというのがこのゾーンなのですが、病院組織内での仕切りは多くの場合、成果主義的な実績優先かつ近視眼的な独立採算の医局縦割りで、「ウチの診療科は利益出しているのだから多少ムダがあっても許される」とばかりに、合理化圧力が掛かりにくくなる傾向があります。リストラなんて以ての外で、まさしく「金のなる」のは事実であるものの所詮「木」でしかない存在に、神木(しんぼく)のように崇めて建造物で囲むが如く多額の予算を投じている。むしろ、このゾーンの医療こそ、将来を見据えたリストラクチャリングが必要なのです。こうした高収益部門こそ徹底したリストラでキャッシュをどんどん捻り出し、その捻出分をその他の部門の将来のための戦略予算に大量供給していく。これぞ「まさに金のなる木」と言えるでしょう。

 「招かれざる客」ゾーンには、その病院の「低収益・件数減」患者が集まっています。応召義務があるので、もちろん診察も治療も拒まず対応しなければなりませんが、報酬点数が低いということは、行政上の視点でも「病院以外の医療機関で看るべき患者」と判断される分野と言えます。ここで行うべき活動は「看板」ゾーンにおけるマーケティングの逆、つまり地域の医療連携を広げつつ、徐々に患者を地域のクリニックなど連携先へと外部委託(アウトソーシング)していく活動です。こうした病診連携を進めつつ地域の後方支援病院として地盤を固めていく。地域の介護施設に対しても、例えば褥瘡処置の技術を積極的に移転するなどして施設の看護力を引き上げ、施設の重症患者収容力を高めていく。ポイントは、クリニックにせよ施設にせよ、病院との“Win-winの関係”が構築できるように仕向けていくことです。

2017/10/01

収益力改善余地と経験曲線効果の評価

「とりあえず“仕分け”終わりました!」

 ある病院で、診療実績を疾病ごとに仕分けてもらった(こちらのエントリ)あと、その理論的な裏付けについて「4つのタイプ」を提示しつつ解説しました(こちら)。でも、経営学的な分析はここからが本番です。さて、研修に出ていた皆さんの仕分け結果を詳しく見てみましょう。

 上の図は、それぞれの疾患を「4つのタイプ」に振り分けたものです。赤い字で書かれているものは各タイプにおける「件数の多い疾患」で、前回の仕分けでも提示されています。ここでは他にも、各タイプの「件数の少ない疾患」(青字)と「多くも少なくもない件数の疾患」(黒字)を併記しています。このように仕分けするだけでも、病院の収益を決める要因が明確に見えてくるはずです。

 せっかく仕分けて頂いた4タイプですが、早速これを修正する作業に入ります。
 第一に、ヨコ軸の仕分け結果を修正する取り組みです。ヨコ軸は「診療報酬-原価」で左右に分けていますが、在院日数削減の取り組みや取りこぼし加算の確保など診療報酬を引き上げていく工夫、また既存スタッフの活用やジェネリック薬の共同購入など原価を引き下げる工夫で、向かって右側の患者(「問題児」「招かれざる客」)を左側の収益ゾーンへと移動させる取り組みが必要です。こうした組織全体での取り組みのほか、患者ごとに設定される「主病名」の選びかたや疾患ごとに用意されているクリニカルパスの見直しなどで、疾患の中には大幅なコスト削減を実現させる道を探り、同様に右側の疾患の一つ一つを左側に寄せていく取り組みが重要です。こうした「収益力の改善余地」について全体と個別で検討し、速やかに実施して、右側の患者をできる限り左側に移動させていくわけです(2つの赤い矢印による「再仕分け」)。つまり、「問題児」はできる限り「看板」へ、「招かれざる客」はできる限り「金のなる木」へと転換させる施策を考える必要がある。これが修正作業の第一です。

 第二に、タテ軸の仕分け結果の再評価です。タテ軸はここ数年における患者数の「伸び」で上下に分けています。経営学的には、患者数が伸びて処置件数が多くなっていけば、対応するスタッフの経験値が増えて首尾良く医療処置をこなせるようになり、また同様の処置を大量にこなすことで規模の経済(量産効果)が引き出され、収益性が上昇していく(経験曲線)という前提があります。このとき患者数が伸びていて件数も多い各疾患においては、自院のチーム医療は「経験曲線効果」を発揮できているか否か(現在は発揮できていなくても、工夫次第で発揮できるようになる余地があるか)を判断することが求められます。その一方、患者数の伸びが滞っている「カネのなる木」は手術や処置の機会が減っていく訳ですから経験曲線効果は基本的には見込めないことになりますが、それぞれに対応する専門医療機器の技術革新や、手術等の時期を調整して一度に行ったりする工夫で、患者数が減少する中でも医療スタッフの経験曲線を上昇させていくことが可能な疾患もあります。これらを下から上へと引き上げていく、また逆に、患者数は伸びていても患者の容態は多種多様で経験曲線を引き上げにくい疾患については上から下へと移動させる。つまり、「看板」と「問題児」の上2つと、「金のなる木」と「招かれざる客」の下2つを、経験曲線効果の有無から入れ替えていく必要があるのです(2つの青い矢印による「再仕分け」)。

 以上のような左右、上下の移動をもって「4つのタイプ」を確定させ、それぞれにマッチした事業戦略を組み立てていく。病院の経営戦略は、こうして具体策を検討する段階に入っていきます(つづく)。

2017/09/28

「患者増加率×医業収益」マトリクス

「患者様受け入れの戦略的プランニング‥ですか」

 先のエントリで、病院診療実績の「仕分け」作業について紹介しました(こちら)。ある病院で、ここ数年の疾患別実績を「利益が多く増加中」の患者群(①)と「利益は多いが減少中」の患者群(②)、そして「増加中なのに利益の少ない」患者群(③)と「減少中で利益も少ない」患者群(④)の4類型に仕分けようとしたものです。経営戦略論の発想では、このような4つのグループを「戦略ユニット(事業方針検討単位)」として捉え、儲かる花形の事業単位①をさらに伸ばして拡大し、大黒柱である同②を効率化して先立つモノをひねり出し将来に備え、悩ましい同③の扱い方を革命的に見直して収益化の道を探り、縁あっていらした同④ではあるがこれを適確な他機関に振り向け自らの負担を減らして行こうとします。つまり、単位ごとにそれぞれ事業戦略の方向と発想法を異なるものとして捉え、メリハリある戦略で中長期的な経営発展につなげていこうとする「戦略思想(戦略的プランニング)」なのです。

 大学で教える経営戦略論のメインに「事業ポートフォリオマトリクス(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント:PPM)」があります。アメリカの世界的に著名な経営コンサルタント会社「ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)」が開発したフレームワークで、企業の製品や事業を「市場成長率×マーケットシェア」という二つの軸で4つの事業タイプを析出し、それぞれに然るべき戦略を明示しようとするものです。私が普段、病院で行っている研修講義では、このBCGの理論フレームの考え方に則りながら日本の医療制度における病院経営の事業環境を考量し、軸の設定や事業単位の名称を病院経営にマッチしたものに一部変更を加えて、新たに作成したマトリクス表を提示しています(以下)。

 このマトリクスでは、縦軸に疾患別の「患者数の伸び」(大・小)を設定し、各病院におけるここ数年の診療実績を、増加率が伸びている患者群と伸びていないもの患者群を分けています。BCGのマトリクスは市場全体の成長率を縦軸としていますが、日本の地域医療圏は完全な自由市場ではなく社会政策的観点のもと計画的に構築されているため、各病院が立地する医療圏での「患者数の伸び」を軸として設定しました。また、横軸に疾患別の「診療報酬収入額マイナス基本原価(診察→処方処置→手術→検査診断→リハビリまでの基本的ケアにかかる人件費、薬剤費、機械等経費、外注費など)」(大・小)を設定し、ここ数年の診療実績をDPC制度に照らして見たときの、医業収益率の高い患者群と低い患者群を分けています。この場合の大小(高低)は、各病院の保有機能によって異なります。疾病単体としては低くても、例えば急性期から回復期、さらに療養期から介護サービスに至るまで(前方から後方まで)カバーしている病院グループが、一人の患者をグループ内で連続してケアすることを前提に、「利益額の大きい事業単位」として区分することもできます。同じくBCGは(相対的)マーケットシェアを横軸としていますが、日本の地域医療制度の計画性を踏まえ、より経営業績に直結する「診療報酬の点数」を設定しました。

 こうして類型化した4つの「事業方針検討単位」ですが、それぞれのコードネームについても日本の病院経営を考量して一部変更を加えました。事業単位②を「金のなる木」、③を「問題児」とし、ここまでは日本で定着しているBCGのネーミングと同様ですが、他方の①を「看板」、④を「招かれざる客」としています(BCGではそれぞれ「花形」と「負け犬」)。

 講義のこの段階で良く聞く医療従事者のご意見が、冒頭のセリフです。「確かに“招かれざる客”かもしれないが、我々には応召義務がある」というものです。病院は公的な機関なので、「利益が少ないという理由で排除することに抵抗がある」という真摯な思いによるものでしょう。そうした場面で私は、いつも次のようにお答えしています。「日常的に意識して“花形”や“金のなる木”を増やし収益力を高めていて初めて、“招かれざる客”も余裕を持って快く対応することができるのです」。

2017/08/30

病院診療実績「仕分け」から考える

「ちょっと前の“民主党の事業仕分け”ですね(失敗したんでしたっけ?)」

A-1 圧迫骨折、A-2 大腿骨頸部骨折、A-3 脳梗塞‥。B-1 糖尿病、B-2 腎不全、B-3 胃がん‥」、そして「C-1 認知症、C-2 肺炎、C-3 インフルエンザ‥。D-1 高血圧、D-2 高脂血症、D-3 褥瘡‥

 これは都市型中規模急性期(約300床)の病院で職員研修を行った際、出席者の皆さんに自院の診療実績仕分けをしていただいた結果です。仕分けの仕方として、以下のごく簡単な指示を出しています。自院のここ2~3年の診療実績から、まず「AとB」として診療報酬点数が比較的「高い」グループ、つまり儲かる、美味しい患者さん(不謹慎で申し訳ありません)を分ける。他方、「CとD」は「低い」グループとして分けます(以下、感想略)。さらに、それぞれを「さいきん増えている or 減っている」で仕分けてもらいます。ということで「AとC」が増加中、「BとD」が減少中です。
 ここでは、とりあえず主要な上位3つだけ挙げていますが、実際は100近く列挙されています。研修では大きめの机に模造紙を広げ、多職種協働のグループワークで、ああでもないこうでもないと議論しながら全ての病名を網羅するよう、作業を指示しています(こういう、多職種のワイガヤが重要なのです)。

 病院経営にとって都合の良い患者は間違いなくA・B群、とりわけA群(点数高く増加中)です。点数が高いのですから(増加中ならなおさら)、色々プロモーション策を講じなければなりません。では「その方法は?」と聞くと、どの病院で聞いても大抵は、ネガティブ方向に発言が向いてしまいます。まず「医師が足りない(整形のドクターは疲労困憊。脳外科医がいない)」から始まり、「看護師が足りない、質が低い(認定看護師が出てこない)」、そして「PT・OTが足りない、質が低い(認定セラピストが出てこない)」、さらには「MSWが足りない、質が低い(医療連携活動に消極的)」。こうしたネガティブ議論の結論は、「病院にカネもコネもない、経営陣の質が低い」。全て「他人のせい」です。
 一方、C・D群については、どうでしょうか。議論の結論から言ってしまうと、「病院は患者を選べない(選んではいけない)、応召義務があるので仕方ない」。全て「政策のせい」です。

 さぁ私としては、ここからが研修の本番です。参加者からのネガティブが出きったところで、こう問いかけます。まず「医師も看護師もPT・OTもMSWも、確かに足りないかもしれないけど、皆さん一応いらっしゃいますよね? いらっしゃる方々の中で、少ないながらも、何か工夫できることはないのですか? 例えば、仕事の仕方を変えるとか、院内連携のあり方を変えるとか、地域連携のあり方を変えるとか‥」、そして「応召義務は、文字通り皆さんの“義務”です。でもそれ“だけ”では経営が持たない。逆に言えば、その義務を果たすために、点数の高い分野(A・B群)では業務効率化が必要だし、点数の低い分野(C・D群)では地域連携が不可欠。そのA・B群ではどんな効率化策が考えられると思いますか?(点数が高いのを良いことに、ムダを放置していませんか?)、同じくC・D群ではどんな連携強化策があると思いますか?(連携は面倒、自分たちで処理したほうが手っ取り早い、とか考えてませんよね?)」。

 毎回のごとく研修会場は、この段階でシーンと静まりかえってしまいます。でも押し黙っているのではなく、医療従事者の皆さんは非常に真面目なので、悶々と頭の中で「色々と方法を」考えて倦ねているのです。講師側としては、この「間(ま)」に耐えつつ、皆さん個々人の中にある「自分のせい」が出てくるのをじっと待たなければなりません。

2017/08/29

経営を取り巻く「ポートフォリオ」

「ポートフォリオって、株とか投資信託のヤツですよね?」

 医学部をはじめ大学教育における「ポートフォリオ」は教育学で語られるものですが(以前のエントリを参照)、経営学ではかねてより、そして今も幅広く使われている概念です(以下4つ)。繰り返しますが言葉の意味は「紙挟み」、皆さんが文書をまとめるとき普通に使う「クリップ」や「クリアファイル」のことです。

 まずは「投資ポートフォリオ」。株でも外貨でも、投資家は一つに全額ぶち込むことなどいたしません。10億円あったら運用は「日本株に25%、米国株に25%、日本国債に25%、土地に25%」といった感じで、リスクの分散を図るのが普通です。このとき、「日本株25%の内容(企業銘柄や価格)やその後の推移(儲け額の実績)を銘柄別などに文書化して一つのクリアファイルに、同じく米国株25%の内容と推移をまとめて一つのクリアファイルに‥」というように、4つの「紙挟み」(ポートフォリオ)で整理して、全体の投資活動を総括する手法、がこれです。

 次に「製品ポートフォリオ」。たとえ老舗の大手メーカーでも、一つのヒット商品だけで長らく収益を維持することなどできません。いずれ消費者に飽きられたり、競合製品に食われたり、事故が発生して法律が変わり生産できなくなったりするリスクがあります。それゆえ「主力製品の売上げが一定の比率を超えたら、あらかじめ決められた数の新製品を投入する」といった感じで、新製品の研究開発にチャレンジするのが普通です。もちろん、新製品も色々あって分野や方向性が異なったりするでしょう。これを「主力」や「新規○○系」、「××系」などグループに分けて文書を整理し、全体の製造・営業・研究開発活動を総括する戦略手法、がこれです。

 そして「雇用ポートフォリオ」。企業の雇用形態は多様化しています。病院同様、スタッフ全員が「正社員(正規職員)」というのはもはや過去の話で、その他にも「契約社員」「派遣社員」「フルタイムのパート(主婦など)」「パートタイムのアルバイト(学生など)」「嘱託社員(定年到達者のパート再雇用)」といった様々な処遇の人たちが働いています。もちろんそれぞれにメリット、デメリットがあります。例えば、正社員は長期安定的だが高コスト、パートは低コストだが不安定、などです。企業は業種のインフラや職種のマーケット事情を勘案し、各雇用形態別に戦略を組み、それぞれの条件や経緯やコストなどをグループに分けて文書を整理し、相互の兼ね合いや雇用構造全体を俯瞰・総括する手法、がこれです。

 最後は、ちょっと視点を変えて「ポートフォリオ労働」。ITエンジニアやコンサルタント、さらにはデザイナーやモデルなどフリーランス志向の専門職は、自分の能力・資格や実例・実績などを分野別にエビデンス付きで文書にまとめ、仕事をマッチングする時に使う「自分自身を売り込むパンフレット」を持っています。これを「ポートフォリオ」と呼び、こうした「パンフ片手に職を転々とする専門職」を「ポートフォリオ労働者」と言います。最近は紙のパンフより、ネット上のポートフォリオサイト(デザイナーやモデルの公式サイトなど)が主流です。

 「神原名医紹介所」が「大門未知子」の華々しい実績をエビデンス付きで分類し、盛々の価格を添えてクリップでまとめ取引先別の営業ツールとして、所長が大きい黒鞄に入れて持ち歩く。それが「ポートフォリオ」。しかし、大門だけではリスキーな(売上が安定しない)ので、「城之内」だけでなく「加地」さらにはもっと若手も入れてリスク分散を図る。これが「ポートフォリオ戦略」です。