2017/09/06

人材も「仕分け」てみる

「話す人が決まってますから、何を議論しても結論は一緒です」

 病院にはいろいろな会議やカンファレンス、打ち合わせがあります。それらミーティングには、大きく二つの種類があります。一つは、決められたポイント項目を確認し、情報を皆で共有するためのもの。例えば、日々の「申し送り」や定例の経営会議などです。情報が的確に隅々まで伝達されるなど、効率的側面が重視されます。メールやテレビ会議システムを使ったIT技術が導入されたり、ダラダラしないよう立ったまま行うなど「進め方・運営の工夫」が求められます。もう一つは、課題や方向を設定し、皆で自由に議論して、何らかの目標や結論を得ようとするもの。例えば、症例検討のカンファレンスやプロジェクトの企画会議などです。白熱した議論に全員を参加させるべく、教育的側面が重視されます。技術的・経営的な課題に取り組ませたり、専門家を招聘したりするなど「討議内容の工夫」が求められます。

 これら「ミーティングの質」は、経営者が最も気にするポイントです。精密なコードで適確な情報がトップからボトムへとスムーズに流れ、組織全体が効率的に整然と動いていく。また、現場のボトムで働くスタッフが気後れせず議論に入り、トップが傾聴して真摯に受け答え、同じ方向を向いた組織全体が活気と熱気に満ちていく。こうした雰囲気が確認できた経営者は、少しぐらい平均在院日数が伸びても病床稼働率が伸び悩んでも、気にしたりしません。こうしたミーティングができているなら、悪い数字も「三寒四温」の「三寒」の一つに過ぎない、と余裕が持てるからです。
 経営者が様々な会議に顔を出し、「ミーティングがスッキリまとまってるね」、「議論がしっかり出ていた企画会議だったね」と満足できていたとしても、しかしながら実は、その背後に大きな構造的問題が横たわっていたりすることがあります。意外に見過ごされがちなポイントです。

 そのシグナルが冒頭のスタッフの、何気ないセリフなのです。経営者目線で見れば、「あのミーティングも、その企画会議も、○○さんのリーダーシップがあったから。○○さんこそ次世代のリーダーだね」。とはいえ、でも現場はそれほど上手く行っていない。多職種協働、チーム医療、全員経営など、そう言えば依然として掛け声だけに終わっている。そんな状況や展開、心当たりありませんか?
 性善説で考えれば、きっと「その○○さん」は患者を思い組織のためにと、一生懸命頑張っていると思います。逆に性悪説で考えれば、「○○さん」は会議で自己実現、自己確認したいタイプが、経営者へのアピール兼ねて発言しているだけでしょう。そのどちらかは、実際見てみないと判断できませんが、そうした状況を全体から打開し、組織の問題を体幹からほぐしていくノウハウがあります。

 是非、会議や打ち合わせのグルーピングを一つでも、「人材のタイプで仕分け」して実施してみて下さい。私が研修のグループワークで、まず最初に行う作業です。常に声を出して会議の場を仕切るリーダータイプだけ集めた会議、リーダーのリーダーシップに協力(あるいは迎合)して場を持たせようとするマネージャータイプだけ集めた会議、リーダーとは一線を画し個人プレーの仕事に走る職人タイプだけを集めた会議、残業はせず仕事は効率化第一で会議では早く終われと押し黙っているワークライフバランスタイプだけを集めた会議です。
 きっと、場の雰囲気やコミュニケーションの展開が、いつもの会議と違ったものになるはずです。「仕切屋」タイプばかりが集まれば、発言のチャンスは減りますが、各自は話す内容のキレを上げようと切磋琢磨します。押し黙るタイプばかりを集めれば、誰も話さない気まずい雰囲気に耐えきれず、誰かが口を開き話し出します。こうして発言の場のレベルが上がり、その場に四方八方から多様な人材が出てくるようになるのです。

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