「全く解りません。一言で説明するとすれば、どんな感じになりますか?」
貸借対照表(こちら)も損益計算書(こちら)も、会計関係の文書(財務諸表)がとにかく苦手で、「どこからどう見て良いのか、全く解らない」と仰る医療従事者が本当に多いと感じます。そうした声を聞くたび、手を変え品を変えイメージだけでも理解して頂こうと色んな言葉で説明したりしていますが、「何となく解った気がする」という反応があるのは以下のような例え話です。
ダイエットに励んでいる人や、筋力強化トレーニングに取り組んでいるアスリートがいたとします。まず、ダイエットやトレーニングに入る前に内臓脂肪CT検査をして、お腹周りを輪切りにした画像を撮ります。その後、専門家によって期間を設定しプログラムが組まれます。現状の把握から目標を定め、その間どのような種類の食事をして、どのような種類の運動をするのか計画を立てます。その実行は、それぞれカロリーを計算しながらプログラムを消化していくのですが、同時に体重やBMIなどの解りやすいデータ指標を設定し、プログラムの進捗に合わせて指標の変化を追い、経過を記録した進捗報告書が作成されます。そして、定めた期間が来たら、もう一度CT検査をして画像を撮り、実際のどの脂肪がどの程度小さくなったのか確認します。OTやPTの方々がリハビリでいつもやっていることなので、容易にイメージできるでしょう。
ここで会計の世界へアタマを切り換えて下さい。このダイエットやトレーニングに取り組む「人」、これは「病院」です。そして、そのプログラムに取り組む「期間」、これが「事業年度」です。日本の場合、企業や病院など事業組織の事業年は「毎年4月1日~3月31日」となっています(法制度上は、事業年を何月から始めても構いませんし、期間の日数が1年に満たなくても構いません。各組織が自由に決定できます)。
さて、ここから財務諸表が登場します。「期間」の節目に撮った「CT検査画像」、これが「貸借対照表」です。CT画像には、その人の胴回りとその内部の骨の太さや筋肉や内蔵や脂肪などが「面積」で可視化されているはずですが、「貸借対照表」には、その「病院」の土地や病棟建物や購入設備や銀行預金などが「価格」で可視化されているのです。そして、プログラムの実施期間に入って様々な取り組みを綴った「進捗報告書」、これが「損益計算書」です。報告書には、期間内に食事によって摂取した総摂取量と同じ期間内に消費した総消費量が記録されるとともに、併せて有酸素運動や筋力トレーニングなどの活動をどのようにどれだけ実行したかが記録され、それらを「カロリー」で可視化しています。これと同じように「損益計算書」では、期間内に入った診療報酬の総収入量と同じ期間内に使った経費の総コスト量が記録されるとともに、併せて診療科別などでどのような活動がどれだけ実行されたのかが記録され、それらを「金額」で可視化しているのです。さらに、期間つまり年度が終わった次の節目に再度CT画像を撮って体内の脂肪と筋肉がどの程度変化したかを確認するように、年度終わり時点の貸借対照表で預金(キャッシュ)と病棟設備の変化を金額の動きで確認しているというわけです。
例えて言えば、さながら「預金は脂肪、病棟設備が筋肉」で、適切な体幹バランスがとれるよう組まれる「プログラム計画は病院予算」です。財務諸表は、カラダの現状と変化の推移を確認する重要な文書なのです。
ある著名な病院理事長との出会いが、このブログの原点となっています。医療とは無縁だった経営学部の大学教授が、理事長のお招きで病院の定例経営会議に出席するようになり、病院内で若手を相手に大学院さながらのマネジメント論ゼミを開講し、現場の問題や政策の課題を伺いつつ毎回お酒をご馳走になって、本当に少しずつ、医療経営の現実と面白さを学んできました。他にも気鋭の病院経営者をご紹介いただき、その下で活躍する医師・看護師をはじめ多種多様な医療従事者と関わるたくさんの機会に恵まれました。これまではただ病院から病院へと講義に歩き回る(ウォークアラウンド)だけでしたが、これからは少しずつでも、経営学者として思考した理論的解釈や医療経営の戦略、さらには病院で使える企業の管理ノウハウなどを書き記し、医療の現場にフィードバックしていかなければなりません。
2017/09/08
2017/09/05
「損益計算書」の読みかた
「入ったカネから出て行ったカネを引いた、残りが儲けってことですよね」
その通りです。損益計算書は、2大「財務諸表」のうちの一つですが(もう一つは、こちら:貸借対照表)、その作成目的は経営成績の明示、つまり「利益」を示すことです。これは企業も病院も変わりありません。「病院は営利追求を目的とした組織ではありません!」とか、経営学者イジメはなしです。病院は確かに非営利組織ですが、社会の中に存在する立派な「法人」、皆さんの病院の名称も「○○医療法人○○会○○病院」となっているはずです。法的に人として認められ、様々な権利を与えられて活動をしている訳ですが、同時に義務も果たさなければならない。日本国憲法「三大義務」のうちの二つ、「勤労の義務(しっかり働いていますか?)」と「納税の義務」の後者を果たす上で、その納税額を決めるのがこの損益計算書です。利益が出て黒字だったらそれなりの税額を、利益が出ず損失ばかりで赤字だったら最低限の税金を、法人として納税しなければなりません。それゆえ非営利組織でも、会計期間の利益を算出し税額を確定させるために、損益計算書をしっかり作り込まなければならないのです。
税額確定のついでと言っては何ですが、損益計算書は、自らの利益(あるいは損失)が、具体的にどのような活動によって生じた利益(同じく損失)なのかを、背景や要因ごとに分類して整理しているところがミソになっています。利益が上がる背景や要因は色々あります。「皆さんが頑張ったから」だけではありません。例えば、「何を頑張った」によって利益は変わります。DPCの点数の高い患者さんのケアで頑張ったらグンと上がるし(医業収益)、低かったら余り上がりません。他にもあります。例えば、病院の駐車場が市街地にあり利用者が多かったりして、その料金収入が好調だったら上がるし(医業外収益)、病院が持っている土地を売却したりしたら上がります(臨時収益)。
一方、利益が下がる背景や要因(コスト要因)は、医療従事者の皆さんにとってもっと重要です。例えば皆さんが、毎日の衛生材料を無駄に使っていれば下がるし(材料費)、働かない人にたくさん賃金を支払えば下がるし(給与費)、リネンなどの業者さんが料金を値上げすれば下がるし(委託費)、稼働しない高額機器がたくさんあれば下がるし(設備関係費)、大勢の人が研修に行けば下がるし(研究研修費)、人材が採れないからと寮としてマンションを借りたりすれば下がります(福利厚生費:経費)。他にも、皆さんのお仕事に関係ないところにもまだまだあります。理事長がクルマを買い換えれば下がるし(減価償却費)、病院が銀行融資を受けて病棟を建て替えたりしていて、その利息が高かったりしていれば下がるし(医業外費用:支払利息)、病院が病棟拡張用に土地を持っていたりしたけれど、やっぱりやめて売ったときに売値が買値を下回ったりすれば下がります(臨時費用)。
近年では、診療科などの部門別に損益計算書を作成する病院も多くなっています(セグメント情報)。病院全体では利益が出ていても、内科、外科、小児科などに分けて見るといろいろと違いがあったりして、ただでさえ仲が悪い診療科間の「争いの種」になったりしています。また、多くの病院には関連のMS(メディカルサービス)法人があり、病院本体の利益や損失が、それらに移転されているケースもあります。ですので、これら関連法人の損益計算書もチェックしなければなりません(連結会計)。
その通りです。損益計算書は、2大「財務諸表」のうちの一つですが(もう一つは、こちら:貸借対照表)、その作成目的は経営成績の明示、つまり「利益」を示すことです。これは企業も病院も変わりありません。「病院は営利追求を目的とした組織ではありません!」とか、経営学者イジメはなしです。病院は確かに非営利組織ですが、社会の中に存在する立派な「法人」、皆さんの病院の名称も「○○医療法人○○会○○病院」となっているはずです。法的に人として認められ、様々な権利を与えられて活動をしている訳ですが、同時に義務も果たさなければならない。日本国憲法「三大義務」のうちの二つ、「勤労の義務(しっかり働いていますか?)」と「納税の義務」の後者を果たす上で、その納税額を決めるのがこの損益計算書です。利益が出て黒字だったらそれなりの税額を、利益が出ず損失ばかりで赤字だったら最低限の税金を、法人として納税しなければなりません。それゆえ非営利組織でも、会計期間の利益を算出し税額を確定させるために、損益計算書をしっかり作り込まなければならないのです。
税額確定のついでと言っては何ですが、損益計算書は、自らの利益(あるいは損失)が、具体的にどのような活動によって生じた利益(同じく損失)なのかを、背景や要因ごとに分類して整理しているところがミソになっています。利益が上がる背景や要因は色々あります。「皆さんが頑張ったから」だけではありません。例えば、「何を頑張った」によって利益は変わります。DPCの点数の高い患者さんのケアで頑張ったらグンと上がるし(医業収益)、低かったら余り上がりません。他にもあります。例えば、病院の駐車場が市街地にあり利用者が多かったりして、その料金収入が好調だったら上がるし(医業外収益)、病院が持っている土地を売却したりしたら上がります(臨時収益)。
一方、利益が下がる背景や要因(コスト要因)は、医療従事者の皆さんにとってもっと重要です。例えば皆さんが、毎日の衛生材料を無駄に使っていれば下がるし(材料費)、働かない人にたくさん賃金を支払えば下がるし(給与費)、リネンなどの業者さんが料金を値上げすれば下がるし(委託費)、稼働しない高額機器がたくさんあれば下がるし(設備関係費)、大勢の人が研修に行けば下がるし(研究研修費)、人材が採れないからと寮としてマンションを借りたりすれば下がります(福利厚生費:経費)。他にも、皆さんのお仕事に関係ないところにもまだまだあります。理事長がクルマを買い換えれば下がるし(減価償却費)、病院が銀行融資を受けて病棟を建て替えたりしていて、その利息が高かったりしていれば下がるし(医業外費用:支払利息)、病院が病棟拡張用に土地を持っていたりしたけれど、やっぱりやめて売ったときに売値が買値を下回ったりすれば下がります(臨時費用)。
近年では、診療科などの部門別に損益計算書を作成する病院も多くなっています(セグメント情報)。病院全体では利益が出ていても、内科、外科、小児科などに分けて見るといろいろと違いがあったりして、ただでさえ仲が悪い診療科間の「争いの種」になったりしています。また、多くの病院には関連のMS(メディカルサービス)法人があり、病院本体の利益や損失が、それらに移転されているケースもあります。ですので、これら関連法人の損益計算書もチェックしなければなりません(連結会計)。
2017/08/25
「貸借対照表」の読みかた
「決算書とか全く意味不明なんですけど‥。そろそろ管理職になるんですが、簿記とか勉強しといたほうがいいですか?」
貸借対照表は、2大「財務諸表」のうちの一つですが(もう一つは損益計算書:こちらを参照)、病院等の経営に関与する立場なら、当然読めたほうが良いに決まっています。ベテランのナースなどで、「経験豊かで部下の人望もあり、“その上さらに”財務諸表も読める」となれば、直ぐさま病院幹部候補の筆頭でしょう。でも「解っちゃいるけど今さら簿記とか無理」。そうですね、簿記3級の勉強とかしなくてもOKです。必要なのは「貸借対照表」の構造を理解すること。資格など不要、「貸借“対照”表とは、何と何を“対照”させた表なのか?」が判っていれば良いのです。
「対照」させるのは、カネなど「元手」と、医療設備など「装備」の二つです。そして、それぞれの内容つまり「“元手”の出どころ」と「“装備”の使いみち」の確認です。これらがまともであるかどうかを評価するのが貸借対照表なのです。是非、ご自身の病院の貸借対照表を引っ張り出してみて下さい。あなたのように(医療はプロだが会計は)素人な人は必ず、医療事務で会計を担当している若手に声を掛け、ちょっと付き合ってもらって、専門用語を一つ一つ問い正しながらご一緒に、自院の貸借対照表に向き合うよう工夫して下さい。(無知で)恥ずかしいから、(彼らも)忙しそうだからなんて遠慮しないようにすること。医療従事者のプライドをちょっと捨てる。ここが重要です。
まず、「元手」の「出でころ」は大きく三つあります。一つは理事長やその家族さらには関係の理事らが元々から出していたカネ。これを「資本金」と言います。貸借対照表には右下のほうに記載されています。二つめは、病院のこれまでの儲け分をため込んだカネ。これを「剰余金」と言います。同じく貸借対照表の右下、「資本金」の下辺りに記載されています。三つめは、銀行など金融機関から借りたカネ。これを「借入金(かりいれきん)」と言います。早い話が、病院による借金です。さて、この「出どころ三つ」、どんなバランスが良いと思いますか?(答え)「借金は少ない方が安全安心」、まあ(低金利時代ではありますが)、その通りです。会計担当の若手と一緒に、自院は「どこがどう良いか」話し合ってみて下さい。
もう一方、「装備」の「使いみち」は色々あります。例えば、上記の「元手」を資本金や借入金など合わせて30億円ぐらい注ぎ込んだとして、その30億円をどんな装備などに使ったか、という用途のチェックです。貸借対照表の左中にある「固定資産」を見ると、病院の建物や設備にどれだけ投資した(使った)かが記載されています。そして、余ったお金は同じく対照表の左上、「現金・預金」として銀行に病院の口座に貯金してとってあります。さらに余裕があれば貸借対照表の左下、「投資その他の資産」として他の病院の買収のために使われたりしています。さて、この「使いみち」、しっかり意味あるモノに使ってますか?(答え)「ちゃんと病院の現在と地域医療の未来のために“使って”れば良い」、はい、その通りです。同じく、会計の若手と一緒に、「何が良かったか」話し合って見て下さい。
「対照」させるのは、カネなど「元手」と、医療設備など「装備」の二つです。そして、それぞれの内容つまり「“元手”の出どころ」と「“装備”の使いみち」の確認です。これらがまともであるかどうかを評価するのが貸借対照表なのです。是非、ご自身の病院の貸借対照表を引っ張り出してみて下さい。あなたのように(医療はプロだが会計は)素人な人は必ず、医療事務で会計を担当している若手に声を掛け、ちょっと付き合ってもらって、専門用語を一つ一つ問い正しながらご一緒に、自院の貸借対照表に向き合うよう工夫して下さい。(無知で)恥ずかしいから、(彼らも)忙しそうだからなんて遠慮しないようにすること。医療従事者のプライドをちょっと捨てる。ここが重要です。
まず、「元手」の「出でころ」は大きく三つあります。一つは理事長やその家族さらには関係の理事らが元々から出していたカネ。これを「資本金」と言います。貸借対照表には右下のほうに記載されています。二つめは、病院のこれまでの儲け分をため込んだカネ。これを「剰余金」と言います。同じく貸借対照表の右下、「資本金」の下辺りに記載されています。三つめは、銀行など金融機関から借りたカネ。これを「借入金(かりいれきん)」と言います。早い話が、病院による借金です。さて、この「出どころ三つ」、どんなバランスが良いと思いますか?(答え)「借金は少ない方が安全安心」、まあ(低金利時代ではありますが)、その通りです。会計担当の若手と一緒に、自院は「どこがどう良いか」話し合ってみて下さい。
もう一方、「装備」の「使いみち」は色々あります。例えば、上記の「元手」を資本金や借入金など合わせて30億円ぐらい注ぎ込んだとして、その30億円をどんな装備などに使ったか、という用途のチェックです。貸借対照表の左中にある「固定資産」を見ると、病院の建物や設備にどれだけ投資した(使った)かが記載されています。そして、余ったお金は同じく対照表の左上、「現金・預金」として銀行に病院の口座に貯金してとってあります。さらに余裕があれば貸借対照表の左下、「投資その他の資産」として他の病院の買収のために使われたりしています。さて、この「使いみち」、しっかり意味あるモノに使ってますか?(答え)「ちゃんと病院の現在と地域医療の未来のために“使って”れば良い」、はい、その通りです。同じく、会計の若手と一緒に、「何が良かったか」話し合って見て下さい。
登録:
投稿 (Atom)