病院にとって、健診は儲る事業です。そこは経営学的に、最も重要なポイントです。厚労省が民間シンクタンクに委託して行った2012年の調査報告書(こちらの48・49ページ)を見ても、それは明らかです。病院の医療外事業のうち儲かるのはクリニック、健診センター、治験施設の3つですが、収入「額」は健診センターよりクリニックがやや高いものの、クリニックは諸々コストも多くなり「益」が出にくくなっています。また、収益「率」で見れば圧倒的に治験施設ですが、こちらはそもそも市場が限られていて額が少ない。もう経営的に見ると、収益の額も多くて率も高い健診センターをやらない手はありません。その一方、残念ながら医療外事業として儲から「ない」のは、同報告書の通り保育所、訪看ステーション、居宅介護支援の3つです(だから経営的に「やるな」というわけではありません。いずれも非常に重要な事業です)。
これだけ儲かるのに、なぜ病院は健診事業に力を入れられないのか。理由は大きく2つあると考えています。
1つは場所と動線設計の問題です。健診は、様々な業務が一直線に並ぶラインを形成するので、工場のように広い場所で、各工程間の待ち時間が最小化するように処理ラインを設計するのが理想です。いつもの病院で、通常通り複数の外来部門がたくさんの患者を受け入れている間を縫い、健診利用者をライン動線に乗せながら随時送っていくような芸当は、自動車メーカーの最先端工場並みの管理技術を要します。1つの生産ラインで様々な車種を多様な仕様オプションごとに作り分ける、フレキシブル生産の技術です。そのレベルのライン管理技術を持つ病院は極めて少ないので、結局そこかしこで待ち時間が多くなって効率が低下し、利用者の不満が増大してしまうのです。もう1つは、人材とりわけ医師の配置の問題です。医学を修めたドクターの多くはとにかく治療がしたいのであって、健診の問診のような業務には興味を示しません(つまり医師が非協力的)。その気持ち、よく解ります。大学教授の私が「講義も研究もやらなくてよろしい。あなたは毎日、入学試験の面接だけやってなさい」と言われるようなものですから。
周知の通り企業は、労働安全衛生法(労働安全衛生規則)のもと、雇い入れた従業員の健康診断を行う義務を負っています。とはいえ企業も従業員も大企業から中小企業まで様々で、これらからの受注チャンネルが色々あります。大企業やその健康保険組合は自社従業員のニーズを捉え、それに適合した健診プランや予約システムを提示する健診センターと契約します。また、インターネット予約システムなどをオープン化して病院や健診センターにつなぐ代行会社もたくさんあります。そして、法の規則とはいえ余りおカネを欠けられない中小・零細企業とその従業員向けに、国が国庫からコストを補助する「協会けんぽ」(全国健康保険協会)の仕組みがあります。
周知の通り企業は、労働安全衛生法(労働安全衛生規則)のもと、雇い入れた従業員の健康診断を行う義務を負っています。とはいえ企業も従業員も大企業から中小企業まで様々で、これらからの受注チャンネルが色々あります。大企業やその健康保険組合は自社従業員のニーズを捉え、それに適合した健診プランや予約システムを提示する健診センターと契約します。また、インターネット予約システムなどをオープン化して病院や健診センターにつなぐ代行会社もたくさんあります。そして、法の規則とはいえ余りおカネを欠けられない中小・零細企業とその従業員向けに、国が国庫からコストを補助する「協会けんぽ」(全国健康保険協会)の仕組みがあります。
さらには、それぞれを経由する企業の健診ニーズも異なっています。大企業などでは女性の雇用や管理職への登用の機会を拡大させる動きが顕著になっていますが、そうなればこれまでの男性向けのメニューを改編して行かなければなりません。「乳がん・子宮がん健診の同日利用」や「男女別ライン動線の確保(検査着姿を男性に、とりわけ同僚の男性社員には絶対見られたくない)」など、女性向けの体制整備が必要です。一方、中小企業はどこも人手不足が慢性化しているので、「とにかく早くしてほしい。待ち時間があって長引くと(会社で待っている上司が)イライラしはじめる」と訴える総務担当者が増えています。こうした様々な企業の声に耳を傾け、儲かる事業がさらに儲かるように取り組んでいかなければなりません。
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