2017/09/08

財務諸表と筋トレダイエット

「全く解りません。一言で説明するとすれば、どんな感じになりますか?」

 貸借対照表(こちら)も損益計算書(こちら)も、会計関係の文書(財務諸表)がとにかく苦手で、「どこからどう見て良いのか、全く解らない」と仰る医療従事者が本当に多いと感じます。そうした声を聞くたび、手を変え品を変えイメージだけでも理解して頂こうと色んな言葉で説明したりしていますが、「何となく解った気がする」という反応があるのは以下のような例え話です。

 ダイエットに励んでいる人や、筋力強化トレーニングに取り組んでいるアスリートがいたとします。まず、ダイエットやトレーニングに入る前に内臓脂肪CT検査をして、お腹周りを輪切りにした画像を撮ります。その後、専門家によって期間を設定しプログラムが組まれます。現状の把握から目標を定め、その間どのような種類の食事をして、どのような種類の運動をするのか計画を立てます。その実行は、それぞれカロリーを計算しながらプログラムを消化していくのですが、同時に体重やBMIなどの解りやすいデータ指標を設定し、プログラムの進捗に合わせて指標の変化を追い、経過を記録した進捗報告書が作成されます。そして、定めた期間が来たら、もう一度CT検査をして画像を撮り、実際のどの脂肪がどの程度小さくなったのか確認します。OTやPTの方々がリハビリでいつもやっていることなので、容易にイメージできるでしょう。

 ここで会計の世界へアタマを切り換えて下さい。このダイエットやトレーニングに取り組む「人」、これは「病院」です。そして、そのプログラムに取り組む「期間」、これが「事業年度」です。日本の場合、企業や病院など事業組織の事業年は「毎年4月1日~3月31日」となっています(法制度上は、事業年を何月から始めても構いませんし、期間の日数が1年に満たなくても構いません。各組織が自由に決定できます)。

 さて、ここから財務諸表が登場します。「期間」の節目に撮った「CT検査画像」、これが「貸借対照表」です。CT画像には、その人の胴回りとその内部の骨の太さや筋肉や内蔵や脂肪などが「面積」で可視化されているはずですが、「貸借対照表」には、その「病院」の土地や病棟建物や購入設備や銀行預金などが「価格」で可視化されているのです。そして、プログラムの実施期間に入って様々な取り組みを綴った「進捗報告書」、これが「損益計算書」です。報告書には、期間内に食事によって摂取した総摂取量と同じ期間内に消費した総消費量が記録されるとともに、併せて有酸素運動や筋力トレーニングなどの活動をどのようにどれだけ実行したかが記録され、それらを「カロリー」で可視化しています。これと同じように「損益計算書」では、期間内に入った診療報酬の総収入量と同じ期間内に使った経費の総コスト量が記録されるとともに、併せて診療科別などでどのような活動がどれだけ実行されたのかが記録され、それらを「金額」で可視化しているのです。さらに、期間つまり年度が終わった次の節目に再度CT画像を撮って体内の脂肪と筋肉がどの程度変化したかを確認するように、年度終わり時点の貸借対照表で預金(キャッシュ)と病棟設備の変化を金額の動きで確認しているというわけです。

 例えて言えば、さながら「預金は脂肪、病棟設備が筋肉」で、適切な体幹バランスがとれるよう組まれる「プログラム計画は病院予算」です。財務諸表は、カラダの現状と変化の推移を確認する重要な文書なのです。

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