「営業職みたいなワーカーさん、よくいらっしゃいます(私はキライです)」
「地域包括ケアシステム」の構築が求められる昨今、医療ソーシャルワーカー(MSW)の役割が注目されています。在院日数の削減、退院支援の強化、医療連携の拡充、在宅療養の支援など地域包括ケアに向けた病院の施策の多くに、MSWが大きく関わっているからです。病院で言ういわゆる“ワーカーさん”は「福祉系三大国家資格(社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士)の一つ」で、医療、福祉、教育、行政の各機関・施設で働いています。「社会福祉の大学等を卒業し、社会福祉士資格を持ち、病院等に雇用された」専門スタッフ、これがMSWです。
MSWは社会福祉士なので、当然ながら社会福祉の教育訓練を受けています。それを象徴するキーワードこそ「傾聴と受容」です。この対人援助技術の訓練を受けて病院に就職したMSWは、援助を必要とする患者・家族と真摯に向き合って、じっくりとニーズを聴き出し(傾聴)、相手の立場を十分に理解して(受容)、様々な制度を活用しつつ適確かつきめ細かな援助策を提供する。これが本職であり天職だと考えているのに、悲しいかな現実はさにあらず、雇用先の病院からは全く異なった指揮命令が下される。「もっと入院していたい」と訴える患者・家族に「退院支援」(「在院日数」を削減するため)、「この病院が好き」と言ってくれる患者・家族に「転院支援」(そのための「医療連携」)などなど。学校で習ったことと就職先でやらされていることが大きく異なる。こうした不満を抱えるMSWは、結構多いのではないかと思います。
その一方、病院経営者からの指揮命令に忠実なMSWがいます。傾聴なんて二の次、患者・家族の訴えをワザとスルーして機械的に退院勧奨、合理性もあるのでしょうが「次の病院・施設はココ!」とかなり強引な転院手続き、日々そうした「振り先となる“取引先”」に菓子折持って営業活動、出先では次いでを見つけて新規取引先の開拓営業、退院支援の人数と在院日数を壁に大きく張り紙して部下にハッパをかけ、理事長や事務長の顔が見えれば営業風に低姿勢の手揉みで近づき、ここぞとばかりに「傾聴」、そしてしっかりと自分の「営業成績」をアピール。理事長らは「地域包括ケアが実現できてるね」とご満悦。それどころか“普通のワーカーさん”に「あれを見習いなさい」と言って行く。その「あれ」の行為は、とても社会福祉士と言えるようなものではないのに。
当エントリのタイトルは『もしドラ(もしも高校野球のマネージャー‥)』でも有名なアメリカの経営学者、ピーター・ドラッカー博士の言葉です。ドラッカーには営業マーケティングの分野でも様々な業績があり、その中で冒頭のような「遺言」を残しています。
「買って!買って!なんて忙しく営業・販売活動なんかしなくても、顧客が自然に買っていく、取引先が向こうから近づいてくる、そうさせるために内部の組織をどう変えるべきなのか? それを組織全体で考えるのがマーケティング活動である」。MSWは、こうした病院マーケティング活動の中心的役割を期待されている(営業活動そのものではない)のだと考えています。
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