2017/08/24

WBSで仕事の「分解」

「これ、私の仕事でしょうか?」

 「私は看護師なのに、本来はソーシャルワーカーがやるべき患者家族の相談対応をさせられている(看護の仕事だけでも激務なのに‥)」、「私はケアマネジャーなのに、本来は医療事務がやるべき雑用やヘルパーがやるべき介護までさせられている(ケアマネの‥以下同)」などなど。医療従事者と話していて、頻繁に耳にするセリフです。その背景にあるものとして、そもそも人手が足りず定着も悪い、職務規程があいまいなので仕事の境界がはっきりしていない、職場のコミュニケーションが不足していて仕事相手の状況やニーズが掴めない、などがあげられています。

 「人手」の人数は規定上足りていても、定着が悪く勤続が短いと状況判断が出来る人は限られ、どうしても特定の人に仕事が集まってしまう。政府は「働きかた改革」等で劣化した労働環境を改善すべく残業削減など様々な労働者保護政策を出しているのだけど、当院の幹部はそんなの気にしていないようだ。もう忙しすぎて、このままだと体調を崩してしまう。せめて通勤時間だけでも削れるように、ここは辞めて自宅近くに転職しよう。こうして平均勤続年数がさらに短くなり、問題がさらに悪化して、おきまりの悪循環に陥る。こんなケースに対する自己防衛的な姿勢が、冒頭のセリフのようなかたちで表出しているのだと思います。

 こんなときは経営学の基礎、WBS(ワーク・ブレークダウン・ストラクチャー:作業分割構成)の概念について解説し、それぞれの職場の仕事(ワーク)の「実際の流れ」を確認したあと、各パートの「内容別・専門別の分解(ブレークダウン)」を行ってみてはどうでしょうか。自分たちの仕事の内容を、まるで人ごとのように、「ここからここまではこういう仕事、そこから先はこういう仕事。その間に誰と誰のミーティング、そして全体のカンファレンス」など、仕事を個別に分解する作業です。分解した作業には、それぞれ名前を付けてもらいます。「患者さんのご家族への連絡」などの小さな仕事も、「家族アポ」でも何でも良いので、自分たちが判るような言葉で名前を付け「ワーク(仕事)」として位置づけて下さい。その後、ワークの一つ一つを、あるべき形につなげて並べていく(ストラクチャー)。仕事のパーツを、中学の数学の簡単な方程式のように公式を交えて1行ずつ因数分解したあと、それぞれをドミノ倒しのコマようにつなげて並べていくイメージです。

 すると、それぞれの仕事の「あるべき内容」や「こなすべき順序」、さらには「やるべき担当」と「前後の距離感」が見えてきます。確かに専門分野とはかけ離れているけれど、この流れでそこにいるのだから、その人がやったほうがいい、つまり「立ってる者は親でも使え」的な感覚です。もちろん、「立ってる者」ばかり使うと、その者が疲弊するし不満を募らせるので、全員で話し合って、ギブアンドテイクやお互い様や「労働力の貸し借り」の仕組みを決めて、実際にやってみる。しっくりこなかったら、もう一度作り直す。WBSが、その作業をするのに不可欠な知識となるはずです。

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