医師曰く「病棟のナースは医師の指示待ち族ばかり。医師が指示しないと誰も動かない。ただでさえ医師は超多忙なのだから、退院支援ナースならなおさら、先々を考えて退院支援に動き出して欲しい。そうでないと、在院日数を縮めるとか永遠に無理!」
他方、看護師曰く「何だかんだ、責任を負っているのは主治医。ナースが判断なんかしたら、それこそ大問題。医師は患者の状態を踏まえた上で、治療と検査のスケジュール、退院見込みの提案、退院日の調整指示、最終カンファレンスへのGoサインぐらいサクッと出してもらわないと‥」
医師と看護師からの板挟みに遭い、退院支援を構成するタスクを洗い出すことにしました。病棟の退院支援を生産管理論の基本であるPERT(プログラム・エバリュエーション・アンド・レビュー・テクニック)モデルに当てはめ、多職種連携による作業を分解して時間軸のもとに並べ、全体の流れの最適化を図る方法です。入院から退院までの全ての作業の流れを鳥の眼で見渡せる作図を行うことで、関わる医療従事者が「次は何をするべきか」悟らせようとするものです。PERT図は通常、クリティカルパス(最重点管理工程)を見出す手法として普及しているので、皆さんが普段使っているクリニカルパスの原型モデルとなるものでもあります。
今回は、症例が多くモデル化が容易な「誤嚥性肺炎患者の受け入れ」を想定し、肺炎治療から退院支援へとつながる多職種協働のPERT図を作成してみました(以下)。
上の図は高齢患者が、発熱に伴って介護施設から救急搬送され、入院するケースです。PERT図ではイベントを丸印と番号で表現します。ここでは①を入院、⑨を退院としています。そして同図では、多職種が協働する様々な活動(アクティビティ)を実線の矢印で表現し、また活動は伴わないもののゴールや指示の確認(サイン)を破線の矢印で表現します。
入院以降は、まず主治医を中心に治療計画を確認する「初期カンファレンス」などの初期イベントがあります(②)。そこでの合意事項のもと抗菌薬治療が開始され、検査スケジュールに基づき発熱とCRPを確認する治療プログラム(②→⑤)が医師によるメインの活動となりますが、同時進行で担当看護師と退院支援看護師による誤嚥性肺炎の嚥下評価プログラムが動き始めます。ここでは、そのプログラムを2つ設定しています。痰吸引の医療処置レベルを見極めるプログラム(②→③)と、食事が始まった段階から介護食レベル(キザミ食、トロミ食など)を見極めるプログラム(②→④)です。メインとなる治療プログラムで体温やCRPのアウトカム水準を確認する「中間カンファレンス」などのイベントが開かれます(⑤)が、このイベントまでに痰の処置方針(③)と介護食の対応方針(④)が見極められ、その(⑤)イベントでOKサインを出すという流れになります。ここまでが、治療プログラムを中心とした前半のプロセスです。
後半は退院支援プログラムを軸とするプロセスに入ります。「中間カンファレンス」のイベントを起点に、メインとなるバトンは医師からMSWに移され、救急搬送元(自宅や介護施設など)に帰るのか、その他の退院先を探すのか、MSWが患者の病状と患者・家族の意思を確認して実際の退院先を確定し、併せてスケジュールの都合を確認して具体的な退院日を確定する退院調整のプログラムが動き出します(⑤→⑧)。それと同時進行で、担当看護師が「中間カンファレンス」で確認した医療処置方針に基づき患者及び家族を指導する医療処置指導のプログラム(⑤→⑥)と、退院支援看護師が退院先となる後方の関係者(介護施設の介護担当者、ケアマネジャー、訪問看護の担当看護師など)に情報を共有し、必要に応じて指導する後方指導のプログラム(⑤→⑦)が進められていきます。メインとなる退院調整プログラムで退院先と退院日を確定後「最終カンファレンス」のイベント(⑧)が開催されますが、このイベントまでに医療指導と後方との情報共有が予定通り執り行われ、担当者はそのイベントでOKサインを出さなければなりません。ここまで関係職種の担当タスクが時間通り遂行されて初めて、⑨の退院へと進んでいくわけです。
入院以降は、まず主治医を中心に治療計画を確認する「初期カンファレンス」などの初期イベントがあります(②)。そこでの合意事項のもと抗菌薬治療が開始され、検査スケジュールに基づき発熱とCRPを確認する治療プログラム(②→⑤)が医師によるメインの活動となりますが、同時進行で担当看護師と退院支援看護師による誤嚥性肺炎の嚥下評価プログラムが動き始めます。ここでは、そのプログラムを2つ設定しています。痰吸引の医療処置レベルを見極めるプログラム(②→③)と、食事が始まった段階から介護食レベル(キザミ食、トロミ食など)を見極めるプログラム(②→④)です。メインとなる治療プログラムで体温やCRPのアウトカム水準を確認する「中間カンファレンス」などのイベントが開かれます(⑤)が、このイベントまでに痰の処置方針(③)と介護食の対応方針(④)が見極められ、その(⑤)イベントでOKサインを出すという流れになります。ここまでが、治療プログラムを中心とした前半のプロセスです。
後半は退院支援プログラムを軸とするプロセスに入ります。「中間カンファレンス」のイベントを起点に、メインとなるバトンは医師からMSWに移され、救急搬送元(自宅や介護施設など)に帰るのか、その他の退院先を探すのか、MSWが患者の病状と患者・家族の意思を確認して実際の退院先を確定し、併せてスケジュールの都合を確認して具体的な退院日を確定する退院調整のプログラムが動き出します(⑤→⑧)。それと同時進行で、担当看護師が「中間カンファレンス」で確認した医療処置方針に基づき患者及び家族を指導する医療処置指導のプログラム(⑤→⑥)と、退院支援看護師が退院先となる後方の関係者(介護施設の介護担当者、ケアマネジャー、訪問看護の担当看護師など)に情報を共有し、必要に応じて指導する後方指導のプログラム(⑤→⑦)が進められていきます。メインとなる退院調整プログラムで退院先と退院日を確定後「最終カンファレンス」のイベント(⑧)が開催されますが、このイベントまでに医療指導と後方との情報共有が予定通り執り行われ、担当者はそのイベントでOKサインを出さなければなりません。ここまで関係職種の担当タスクが時間通り遂行されて初めて、⑨の退院へと進んでいくわけです。
この退院支援モデルは、現時点では協働タスクの連携構造図(ネットワーク図)に過ぎないので、それぞれの矢印の「時間軸の長さ(予定所要時間)」が入っていません。しかしながら様々な病状と重症度、様々な属性の患者の退院支援について、各タスクを開始するタイミングの変更、「ついで」の機会を使った効率化や情報システムの活用、それぞれの専門職が専門分野を超えて行うタスクの融通などを工夫しつつ、様々なケースの所要時間を計測、記録していくことで、在院日数の短縮化と標準化が進んでいく展開を期待しています。
今後は、この「モデル」を「実績」に変えて行かなければなりません(こちらのエントリにつづく)。
今後は、この「モデル」を「実績」に変えて行かなければなりません(こちらのエントリにつづく)。
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