「入ったカネから出て行ったカネを引いた、残りが儲けってことですよね」
その通りです。損益計算書は、2大「財務諸表」のうちの一つですが(もう一つは、こちら:貸借対照表)、その作成目的は経営成績の明示、つまり「利益」を示すことです。これは企業も病院も変わりありません。「病院は営利追求を目的とした組織ではありません!」とか、経営学者イジメはなしです。病院は確かに非営利組織ですが、社会の中に存在する立派な「法人」、皆さんの病院の名称も「○○医療法人○○会○○病院」となっているはずです。法的に人として認められ、様々な権利を与えられて活動をしている訳ですが、同時に義務も果たさなければならない。日本国憲法「三大義務」のうちの二つ、「勤労の義務(しっかり働いていますか?)」と「納税の義務」の後者を果たす上で、その納税額を決めるのがこの損益計算書です。利益が出て黒字だったらそれなりの税額を、利益が出ず損失ばかりで赤字だったら最低限の税金を、法人として納税しなければなりません。それゆえ非営利組織でも、会計期間の利益を算出し税額を確定させるために、損益計算書をしっかり作り込まなければならないのです。
税額確定のついでと言っては何ですが、損益計算書は、自らの利益(あるいは損失)が、具体的にどのような活動によって生じた利益(同じく損失)なのかを、背景や要因ごとに分類して整理しているところがミソになっています。利益が上がる背景や要因は色々あります。「皆さんが頑張ったから」だけではありません。例えば、「何を頑張った」によって利益は変わります。DPCの点数の高い患者さんのケアで頑張ったらグンと上がるし(医業収益)、低かったら余り上がりません。他にもあります。例えば、病院の駐車場が市街地にあり利用者が多かったりして、その料金収入が好調だったら上がるし(医業外収益)、病院が持っている土地を売却したりしたら上がります(臨時収益)。
一方、利益が下がる背景や要因(コスト要因)は、医療従事者の皆さんにとってもっと重要です。例えば皆さんが、毎日の衛生材料を無駄に使っていれば下がるし(材料費)、働かない人にたくさん賃金を支払えば下がるし(給与費)、リネンなどの業者さんが料金を値上げすれば下がるし(委託費)、稼働しない高額機器がたくさんあれば下がるし(設備関係費)、大勢の人が研修に行けば下がるし(研究研修費)、人材が採れないからと寮としてマンションを借りたりすれば下がります(福利厚生費:経費)。他にも、皆さんのお仕事に関係ないところにもまだまだあります。理事長がクルマを買い換えれば下がるし(減価償却費)、病院が銀行融資を受けて病棟を建て替えたりしていて、その利息が高かったりしていれば下がるし(医業外費用:支払利息)、病院が病棟拡張用に土地を持っていたりしたけれど、やっぱりやめて売ったときに売値が買値を下回ったりすれば下がります(臨時費用)。
近年では、診療科などの部門別に損益計算書を作成する病院も多くなっています(セグメント情報)。病院全体では利益が出ていても、内科、外科、小児科などに分けて見るといろいろと違いがあったりして、ただでさえ仲が悪い診療科間の「争いの種」になったりしています。また、多くの病院には関連のMS(メディカルサービス)法人があり、病院本体の利益や損失が、それらに移転されているケースもあります。ですので、これら関連法人の損益計算書もチェックしなければなりません(連結会計)。
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